ブラジキニンB1及びB2受容体の生理・病理的役割を解析する為の基礎研究として、ラットB1及びB2受容体をクローニングしこれを動物細胞に過剰発現させた。この細胞を用いてリガンド刺激により活性化される細胞内情報伝達経路を調べたところ、MAPキナーゼカスケード及びCキナーゼが活性化されることが明かとなった。さらにこれらの蛋白質リン酸化酵素の下流には、転写調節であるAP-1が存在することがわかり、AP-1により転写調節を受ける誘導型分子がキニン類により発現誘導されることが推定されたが、詳細については今後の検討が必要である。また、B1及びB2受容体の発現を高感度に定量的に検出するRnase protection assay法を確立し、これを用いて各種培養細胞株におけるB1及びB2受容体の有無を検索した。その結果、ヒト臍帯内皮細胞由来の細胞株において両受容体の存在が認められ、更にこの細胞がリガンド刺激にともないAP-1の活性化を示すことが明かとなった。従って、血管内皮細胞はキニン類によりB1及びB2受容体を介してAP-1による転写活性を引き起こすことが示唆され、血管内皮細胞の生理・病理的機能にキニン類が関わる可能性が推定された。また、この細胞はキニン類と血管内皮細胞の関係を解析するために有用であると考えられた。
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