研究概要 |
1.パッチクランプ法による視交差上核神経細胞興奮性の記録 まず急性作成スライスを用いたホールセルパッチクランプ法により、視交差上核神経細胞の種々のイオン電流測定を行ない、その電流特性を検討した。ラットより厚さ450umの脳スライスを作成し、記録電極を挿入しギガシールを形成後、陰圧負荷によりホールセルバッチを形成した。膜電位を-60mVに固定し、GABAa受容体拮抗薬のビキュキュリン存在下で、スライス上の視神経の電気刺激により、興奮性内向き電流が記録できた。この内向き電流はグルタミン酸受容体の1つであるAMPA受容体の拮抗薬により完全に消失した。さらにAMPA受容体活性化薬であるアニラセタムがこの内向き電流を増強することが判明した。また逆にAMPA受容体拮抗薬存在下で電気刺激を行なうと、外向き電流が観察され、これはビキュキュリンで拮抗されることから、GABAa受容体を介したクロライドイオン流入であることが明らかとなった。 これらの基礎的実験により視交差上核神経細胞のイオン電流特性を明確にすることができた。 2.アンチセンスオリゴヌクレオチドによるピリオド遺伝子発現の抑制とその影響 3種のマウスピリオド遺伝子(mPerl,2,3)の翻訳開始点を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを作成し、その効果を検討するため、脳室内に投与後、光照射を行ない、in situ hybridization法によって視交差上核のピリオド遺伝子の発現量を定量した。その結果、3種類のアンチセンスがそれぞれに対応する遺伝子発現を特異的に抑制することを確認した。また、行動リズムに対する効果を併せて検討したところ、光により誘導されるPer1,2のアンチセンスのみが光によるリセットを抑制することを明らかにできた。今後、これら作成したアンチセンスのイオン電流に対する効果をin vitroの系で検討していく。
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