本年度は、脳におけるdi/tripeptideの取り込みをラット大脳皮質および小脳より調整したsynaptosomesを用いた系により検討するとともに、この取り込み機構をになっていると考えられるtranspoterの同定を行った。ラット脳より調整したsynaptosomeへの[^<14>C]glcylsarcosine(Gly-Sar)および[^3H]carnosine(β-Ala-His)の取り込みは、内向きH^+勾配存在下(pHin=7.5;pHout=6.0)で顕著な増大し、またその取り込みには飽和性が認められた。Eadie-Hofstee plotの結果から、この取り込みに関与しているtransporterは1種のみであることが示され、Kt値は約100μMであった。また、[^<14>C]Gly-Sarのsynaptosomeへの取り込みはkyotorphin(Tyr-Arg)やcarnosine、enkephalin fragmentあるいは経ロβ-lactam抗生物質により阻害を受けたが、TRH(pGlu-His-Pro-NH_2)では阻害を受けなかった。以上の結果を考え合わせると、synaptosomeへの[^<14>C]Gly-Sarあるいは[^3H]carnosineの取り込みを担っているtransporterとしてhigh-affinity type H^+/oligopeptide transporter(PEPT2)の存在が示唆された。そこで、specific primers を用いたRT-PCRによりラット大脳皮質および小脳におけるPEPT2mRNAの発現を検討したところ、大脳皮質、小脳いずれの部位においてもPEPT2mRNAの存在が確認されたが、low-affinity type H^+/oligopeptide transporter(PEPT1)mRNAの発現は認められなかった。さらに、抗rat PEPT2抗体(ジョージア医科大学・Leibach教授より供与)を用いたWestern解析の結果からも、synaptosome画分においてPEPT2がタンパク質レベルで比較的豊富に存在していることが明らかとなった。こうした成果は、本研究者が文献検索した範囲内では、脳においてPEPT2が機能していることを明らかにした最初の報告であり、その成果の一部は既に研究発表を行った。
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