ヨードシンポーター(NIS)に対する自己抗体を有する自己免疫性甲状腺炎患者では、ヨードの細胞内への取り込み障害が起こり、甲状腺機能低下症になるのではないかと私たちは推定しており、それを証明することが本研究の目的である。平成11年度にはNISを細胞表面に高密度で発現しているHEK細胞を得て、この細胞と自己免疫性甲状腺炎患者血清を反応させ、さらにFITC標識抗ヒトIgG抗体を加え、フローサイトメーターで調べたが、NISを発現していないHEK細胞にも患者血清が結合し、このままでは自己抗体を特異的に検出することができないことが明らかになった。そこで、平成12年度にはヒトNIS-C末端の15アミノ酸に対するウサギ血清よりIgGを精製し、これをELISAプレートに結合させたのち洗浄し、昨年度の研究で得たヒトNISを高密度に発現させたHEK細胞を可溶化し、抗ヒトNISウサギIgGに結合させたのち洗浄し、抗NIS抗体の有無を調べたいヒト血清を加え洗浄し、アルカリフォスファターゼ(AP)を付けた抗ヒトIgG抗体を加え洗浄し、最後にAP基質を加え、その発色の程度により自己抗体の有無を判定した。自己免疫性甲状腺炎患者血清が抗ヒトNISウサギIgGに非特異的に結合してしまうため、ヒトNISに対する自己抗体を特異的に検出することができないことが明らかになった。以上の結果より、現時点でNISのような膜蛋白に対する自己抗体を調べるには、最近報告されだしたin vitro transcription/translationで合成した標識蛋白を用いたradioligand assayが適当な測定法ではないかと推定される。本研究で作成した細胞は自己抗体を測定するためには利用できなかったが、今後NISの自己免疫性甲状腺炎における役割を調べる上で利用していく予定である。
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