研究概要 |
アンドロステンジオール(ADiol)の高感度酵素免疫測定法(EIA)を確立した.すなわち,ADiolの7位のカルボニル誘導体(ADiol7CMO)を合成し,アルカリホスファターゼ(Alp)と結合してADiol7CMO-Alpを得た.この標識抗原と市販抗体(抗ADiol7CMO-BSA)によるホモロガスEIAを作成した.さらにADiolの7位のイミノメチルカルボン酸誘導体(ADiol7ICA)を合成し,ADiol7ICA-Alpを調製し,先の抗体との組み合わせによるヘテロロガスEIAを作成した.その結果,後者の方がはるかに高感度であることが明らかとなった.(Clin.Chim.Acta印制中).ADiolの前駆体であるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)のEIA,並びにこれらステロイドの硫酸抱合体(ADiolS,DHEAS)のGC/MSによる測定法も確立した.これらの測定法により,未治療の前立腺癌及び前立腺肥大症患者血中ステロイド濃度を測定したところ,未治療の前立腺癌患者血中ADiolSおよびDHEAS濃度は正常人及び前立腺肥大症よりも有意に低下しているという結果が得られた.なお,ADiol,DHEA濃度には有意差は認められなかった(投稿準備中).一方,自己免疫疾患として甲状腺機能亢進症,及び機能低下症の患者血中DHEAとDHEAS濃度について検討したところ,機能亢進症ではDHEA濃度には正常人と有意差を認めなかったが,DHEAS濃度では有意な上昇を認めた.機能低下症ではDHEA,DHEASとも有意な低下が認められた(Clin.Chem.印刷中).現在,ADiolおよびADiolS濃度について検討中である. アンドロステントリオール(ATriol)のEIA系を確立については,DHEAからATriol標品の合成を行った.また,GC/MSを用いて血清中ATriolの同定を試みたが,正常人血清にその存在を確認できなかった.今後,ATriolが特定の疾患でのみ出現しているかについて検討を行う予定である.
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