本研究の目的は、リラクセーション技法による介入が、更年期の女性に対して更年期症状の緩和と気分の安定をもたらすことを検証することである。対象は、40歳から50歳代の女性のうち更年期症状の程度に関わらず、研究目的に賛同し自らの意志を表明した者とした。本研究のデザインはプレテスト、ポストテスト、コントロールデザインである。昨年度は、対照群29名に対し8週間にわたり更年期症状などの追跡調査を実施した。本年度は実験群36名に対してリラクセーション技法(漸進的筋弛緩法:PMR)による実験的介入を行い、対照群と同様に追跡調査した。評価指標は、簡略更年期指数(SMI)、気分プロフィール(POMS:緊張-不安、抑うつ、怒り、活気、疲労、混乱の6尺度)、身体感覚尺度、血圧、脈拍、日常生活における変化(食欲、便秘の有無など)の質問紙である。データ測定は初回、2週後、4週後、8週後のPMR実施前に行い、POMS、身体感覚尺度、血圧、脈拍は実施後にも測定しリラクセーションの効果を評価した。なお、調査期間中はフォローアップ練習に参加してもらうこと、毎日自宅で1回以上練習することとした。 結果は、調査条件を満たさない者を除く22名のデータを集計し、SPSSを用いてt検定により対照群と比較した。有意水準は5%とした。両群間に年齢、および初回のSMIに差はなかった。4回の経日的な変化は、SMIにおいては初回29.7点から8週後26.5点に低下したが差はなかった。POMSにおいては、混乱の項目で差が認められた。実施前後での変化は、POMSにおいては、活気を除く項目で有意に低下した。身体感覚尺度は、実施後に回数を経るほど大きく上昇し、初回以外は差が認められた。脈拍も実施後有意に低下した。 以上の結果、SMIの経日的な改善の効果は明らかにされなかった。しかし、PMR実施後はリラックス感が得られ、気分が良くなっており、経日的なリラックス効果も高まる傾向が見られている。さらに事例を増やしPMRの修得期間の目安とされる3ヶ月以上の長期にわたる追跡調査を行い、臨床場面における補助的な療法としての有効性を明らかにしていくことが必要である。
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