この研究の目的は、経験的手法として用いられることが多い温罨法を、看護技術として体系化させることにあった。生体にもたらす効果については生理学的な指標のみならず、対象の主観的効果との関連についても探求する必要性が看護に求められていると考えられたからである。 本年度の到達目標として、寝具による相乗効果を除いた温罨法そのもの効果が生体に及ぼす影響について、対象の主観及び生理学的な指標に基づき評価することを挙げた。そこで温罨法の実施によって惹起される局所皮膚血流量の変化や温冷感覚、快適感覚の変化と温熱刺激との関連性を検証することとした。 温罨法を電気あんかと湯たんぽの2種類に定めたクロスオーバーデザインを組み、健康な女性19名(20歳以上30歳未満で3回の協力が可能、かつ内分泌疾患の既往がなく、定期投薬も受けていない者)を対象として実験を行った。コントロールは毛布で被覆するのみとして、2種の温熱刺激物の表面温度は実験中40℃に保った。同一被験者に対する3つの温熱条件は日を変えて順番を無作為に割り付けて実施した。 実験結果として、就床中の足趾への温熱刺激が足趾皮膚血流量の有意な増加を示したほか、主観的効果である温冷感と快適感もそれぞれ、足趾皮膚血流量と同様の経時的変化を示した。したがって生理学的な指標と対象の主観が密接に関連することが示唆された。また、器具による相異として、電気あんかに対する湯たんぽの優位性が明らかにされた。被覆内温度の測定結果からは温罨法は空間内部を温める作用を持たず、身体に直接的に作用することで効果を発現すると考えられたため、対象の身体状況に即した温罨法器具の選択について更に検討する必要がある。
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