研究概要 |
研究参加の同意が得られた尿道留置カテーテル患者9名(閉経後の女性,平均年齢75.56)を対象として,強酸性電解生成水溶液(以下:電解酸性水とする)を用いた陰部洗浄を実施した.その有効性については,細菌等のコロニー数の変化や同定,皮膚のpH,皮膚の油分により評価した.細菌等の採取は,カテーテル挿入日,3日目,5日目の洗浄前後に尿道周囲で採取した.また,尿を挿入日と5日目に採取した.皮膚pHおよび油分変化については,毎回の洗浄前後に鼠径部にて測定し,前後値をペアードt検定した. その結果,洗浄前にはCitrobacter freundii,Enterococcus faecalis,K.pneumoniae,Staphylococcus sp.,Morganella morganii,G群β-Streptococcus,E.coliなどの菌種を認めた.これらの細胞は,洗浄後にはいずれも減少傾向を示した.また,5日目の尿培では5名が陰性であった.このことは「尿道留置患者の85.0%以上は,48〜96時間で尿路感染が認められる.」との報告があることから,上行性感染に対して予防効果があると考えられる.また,皮膚pHが6.23±0.31(洗浄前)が5.59±0.40(洗浄後)と有意(P<0.01)に酸性傾向を示したことは,皮膚の抗菌作用を保たせ同時に恥垢の発生を予防する効果も考えられる.皮膚油分ついても,80.11±22.42(洗浄前)が61.59±17.67(洗浄後)となり有意差(P<0.01)を認めたことで,電解酸性水のみの洗浄法でも物理的効果で油分は減少させることができると考えられる.そして,今回の洗浄期間中に皮膚の異常や訴えは認めなかった.
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