平成11年度は「HPNおよび、HOTケースと家族の、入院から在宅への移行する過程での準備状況を明らかにする」ことを中心に研究を進めた。文献検討の結果、家族の準備性を明らかにするために、(1)在宅療養を選択・維持していく能力、(2)在宅移行の動機づけ、(3)入院時の状況・退院前後の状況・在宅での状況、について半構成式のインタビューガイドを作成した。現在、訪問看護サービスを受けており、事前に承諾の得られたHPNケース及び家族2例、HOTケース及び家族3例を自宅に訪問し、面接法および参加観察法により、データ収集を行った。 現在までのデータ分析の結果、(1)家族の能力として、「主介護者の身体的健康」「主介護者の知的能力」「療養者へのpositiveな思い」といった『主介護者の能力の高さ』と、「家族全体のマンパワー」「経済力」「役割遂行能力」といった『家族全体の能力の高さ』は、家族の準備性を高めるための要因として抽出された。一方『ケース本人の能力』は「寝返りも介助が必要で痴呆のあるケース」〜「後期高齢者2人世帯で、自立で家の周りを散歩できるケース」まで様々であった。(2)動機づけでは、『医療者の働きかけ』『ケースの意思』『主介護者の意思』『家族の価値観』『社会的支援』『タイミング』といった要因が抽出された。(3)入院から在宅への移行過程の状況では、家族とケースは、入院中での準備よりむしろ、在宅療養開始後、試行錯誤を繰り返しながら、在宅継続への準備状況を整えていることが明らかになった、また、HPNではHOTよりも療養者が重篤で医療依存度が高く、準備性を高めるために、より看護援助が重要であることが示唆された。 平成12年度では、更に数例のデータ収集後、分析をまとめ、HPNとHOTケースそれぞれの準備状況についての特徴を明確化し、HPNケースと家族の準備状況をを高めるための条件を考察する。また、看護者がHPN・HOTの指導・援助で、どのような困難や問題を感じているか、実際にどのような指導・援助をおこなっているか実態を明らかにし、効果的な援助を抽出する。以上の結果をもとにHPNケースと家族が準備性を高めるために効果的な看護援助方法を、開発していきたい。
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