緩和ケアのClinical Auditの道具である、カナダ・エドモントンで開発された、ESAS(Edmonton Symptom Assesment System)の臨床適用を行った。ESASの臨床適用は我が国では初めてである。調査対象施設は首都圏のA病院ホスピス病棟、調査期間は14日間であり、調査対象は期間内に入院していた全ての患者のうち研究への同意が得られたものである。測定は、毎日、日勤帯と準夜勤帯のはじめの2回、オリジナルのESASに準じ、痛み、倦怠感、嘔気、抑うつ、不安、眠気、食欲、幸福感、呼吸困難感の9項目について調査票を作成し使用した。さらに、研究終了後に看護婦へのアンケートを行った。2週間の調査期間中、同意の対象となった患者の83%が研究に同意し、研究に参加した。患者の拒否による研究途中での脱落はなかった。項目別の平均得点は幸福感、眠気、抑うつ、不安、倦怠感の順に得点が高かった。欠損は項目別に19.0%〜27.2%であり、不安、幸福感、抑うつで高かった。記入者の内訳は患者43.8%、看護職補助35.3%、看護職20.3%、その他0.7%であった。看護職へのアンケートの結果から、幸福感、抑うつ、不安などの心理的症状における、質問票の日本語としての表現に問題があるなど、いくつかの問題点が明らかになった。本研究の同意の状況、途中脱落がなかったこと、欠損値の割合などから、わが国の緩和ケア病棟においてESASを日常的に使用することは可能と思われた。しかし、Well-beingを幸福感と日本語訳したこと、不安、抑うつなどの心理的症状に関する項目の日本語訳は、今後慎重に検討することの必要があり、次年度以降の課題である。
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