研究概要 |
H11年度には以下の2実験研究を実施し、解析にはSPSSを用いた。 1,「二重拘束コミュニケーションが情動判断に及ぼす影響」として、会話内容と口調に焦点を当て、内容(肯定的×否定的)と口調(肯定的×否定的)の4つの刺激材料を作成し、看護婦80名、看護学生100名を対象に実験を行った。対象群(看護者一学生)×会話内容(肯定的一否定的)×口調(肯定的一否定的)で分散分析を行った結果、(1)看護婦と学生では再生成績に有意差があった。(2)感情判断においては、否定的感情表出に注目する傾向がある。(3)印象や好感度は口調に影響を受けていた。(4)理解度や再生成績は、内容のほうが重視されていた。 2,「看護場面における情動を判断する伝達シグナルの検討」として、表情、口調、内容の3つの伝達シグナルをそれぞれ肯定的、否定的性質のものを2種類用意し、それぞれ組み合わせた8条件を演技者に演じてもらったものをビデオ収録し、刺激材料とした。看護者と看護学生44名を対象として実験を行った。重回帰分析を行い、偏相関係数および全体の分散に対する説明率を求めた結果、(1)総合評価ともっとも関連していたチャンネルは「映像」ついで「文字」であった。(2)各条件毎にみると、内容が否定的あるいは内容が肯定的でも表情・口調が否定的な場合では、「音声」が総合的評価に影響を与えていた。(3)看護者と看護学生では、「表情が肯定、口調と内容が否定」と「表情と内容が否定、口調が肯定」の条件において差異がみられた。 今後、これらの結果が看護場面に特徴的なのか、看護者の特性なのか、作成された刺激に対する反応と実際の臨床場面との差異などを検討していきたい。
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