妊婦ドライバーに保健・医療サイドから的確なアドバイスを行えるよう母子の安全に関する基礎的情報の集積を目的として、平成12年度に以下の研究を実施した。 研究対象:医療法人定生会谷口病院(大阪府泉佐野市)で出産した790名 質問紙の自由記載回答欄に述べられた妊娠中の自動車運転に対する意見について分類・整理を行った結果、懸念事項として妊娠のアウトカムに関する項目が多く含まれていることが判明した。そこで、回答者の妊娠のアウトカム(切迫早産・在胎期間・分娩時胎位・臍帯巻絡・出生体重・アプガールスコア・分娩時の母体BMI)に関する情報を出産記録より収集し、運転との関連について検討を行った。臍帯巻絡以外は自動車運転によるリスクの増大は認められなかった。妊娠中の自動車運転と臍帯巻絡の頻度の関係は現在調査中のprospective studyにより検討する予定である。 これまでの研究結果を総合して、妊婦ドライバーに保健指導を行う保健医療職者へ次の10項目を提言した。 (1)妊婦の日常生活行動に関する情報収集事項の中に自動車運転の有無を入れ、地域をふまえた実態を把握しておくこと。 (2)特別な理由がない限りほとんどの妊婦は自動車運転を中断しないという前提にたって、個別指導を考えること。 (3)子宮筋活動が高まっている妊婦は運転を控えた方が安全である。切迫早産傾向のある妊婦は要注意。 (4)疲労・子宮筋活動亢進予防のため、長時間運転を避けるように指導する。 (5)帰宅後の十分な安静をすすめる。 (6)運転に自信がない妊婦、運転歴の浅い者は注意する。 (7)妊娠中に運転スピードをおとしている者は、後続車にあおられないようにステッカーを貼っておくことをすすめる。 (8)CTG上では胎児に対する影響はないことを伝え、胎児に対する不安を取り除く。 (9)妊婦が自動車運転中に感じやすい不快症状や運転操作に関する情報を予め伝えておく。 (10)シートベルト着用の重要性を伝え、安全な装着方法を指導する。産後のチャイルドシート使用の意識向上へつなげる。
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