研究概要 |
本研究は,Low riskの妊婦が,妊娠初期から,出産後に至る約10ヶ月間に,どのように「胎児への感情」を育んでいるのか,また,その胎児への感情は,どのような特質を持ち,どのようなプロセスをたどるのか探索することを目的としている。 本研究の趣旨を理解の上で,協力を依頼した女性は現在6名であり,妊娠が確定された妊娠初期の段階から追跡を開始している。面接の間隔は1〜1.5か月であり,追跡はこの後産後数ヶ月まで継続する予定である。データは研究参加者の語りに,研究者の参加観察データを加えている。データの分析方法は,研究参加者の<胎児>への感情に対する思いと,それに影響を及ぼした状況とその過程について記述することを目的とする為,継続比較分析方法を参考にした。 研究参加者6名のうち,初産婦が4名,経産婦が2名である。最も妊娠が進行しているAさんが妊娠35週であり,現在のところ研究参加時期が最も遅いFさんが妊娠17週である。現在もデータ収集は続行しており,分析も途上にある。全ての妊婦が妊娠初期より,新しく始まる「子どものとの生活を整える」為の行動を具体的に起している。そして,具体的生活を整える途上で,生まれてくる子どもを空想し,子どもとの生活をイメージしている。それは同時に,将来の夫婦の在り方を想像する作業と重なっていた。今,おなかの中にいる子どもに対する気遣いは,日常の生活では意識下にない場合も多く,研究者との対話の中で始めて気づく状況もあった。その一方で,大きくなった自分のおなかを見下ろしながら,具体的に,子どもを膝に乗せているのに近似した感情を抱く場合もあった。今後も各事例の体験を基に比較分析を実施していく予定である。
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