1.「経口摂取が困難となった終末期患者への看護介入について」共通の事例と場面設定を提示して行ったインタビュー調査:患者が何を使って、何を好んで飲む/食べるのかについて特別な明示がない場合は、その時の看護側の判断(Ex.患者の安全・安楽を重視する)を優先して、体位や道具などが選択、決定される傾向が強かった。そして患者のこだわり(Ex.熱いお茶、このコップで、ここに置くなど)は一部の看護婦以外には伝わりにくいことが多く、また患者の状態が悪い場合、その都度聞かれるのも億劫と思えるので、必要事項は何らかの形で明記するとの意見も聞かれた。一方「飲酒」を題材にした場面では、本人への告知の有無が看護介入時の姿勢(消極的or積極的)に影響を与えている可能性が示唆された。また本当に本人の希望があれば一般には病院では禁止されている飲酒についてもできる限りその希望をかなえる方向での看護介入があげられていた。 2.終末期患者および家族の現状の「食」のケアに対する受け止め方や経口摂取への思いについてのインタビュー調査:全般的な「食」への欲求や思いとしては、病院食の温度・見た目・量などに対する不満、器・嗜好などへのこだわり、配茶のタイミングや配膳時の態度などに対する指摘、入院しているがための我慢やあきらめの気持ちなどが表されていた。また一般病棟の患者からは設備環境の不備に対する不満や不便さが、一方緩和ケア病棟の患者からは設備が完備されているだけでは満足できない、さらに看護婦の言葉がけによっても負担感を感じることがあるなどの意見があった。 以上、経口摂取が困難な状態であっても患者は、自分の好きなものをおいしく食べたいというレベルから、たとえ実際には食べられなくても精神的に満たされればOKというレベルまで多岐にわたり様々な思いを持っていた。看護婦たちは個々の患者の欲求レベルに合わせ適切に看護介入することが必要であり、そのためには食に対して広義的、多角的な視野をもつことの大切さが改めて示唆された。
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