施設において高齢者の役割に対してどのような取り組みが行なわれているのか、大阪府下の老人保健施設で観察を行い、現状を把握した。その結果、痴呆症状のない高齢者は自分から役割や日課を見つけて生活を行っていた。それに反して、痴呆性高齢者は環境への適応能力の低下から、施設に入所することによって混乱をきたした状況が多く見られた。そのため、痴呆性高齢者は自分から役割を遂行することが困難であり、何らかの援助が必要であると思われた。その援助の一つとして、看護者は「頼む」という行為を多く遂行していた。「頼む」ことによって、痴呆性高齢者は表情が穏やかになり、他の高齢者との交流も見られるなどの変化があった。そこで、本年度は老人保健施設で痴呆性高齢者を援助している看護婦を対象者とし、「頼む」という援助の意味に対して調査を行うことにした。方法としてグランデットセオリー法を用いて、看護婦に半構成のインタビューを行い、内容は許可を得て録音した。インタビューの内容は看護者が痴呆性高齢者の役割をどのように捉えているのか、痴呆性高齢者がどのようになってもらいたいと思っているのか、援助の判断はどのように行っているのかなどである。現在までに7名にインタビューを行い、内容を記述したものをアドバイザーと共に意味の分析を行った。その結果、「頼む」ことに対する意味が2種類みられた。また、意味を聞き出し切れていないと判断したため、意味を深める意味で、同看護婦に2回目のインタビューを行っている。さらに今後、異なる意味が出なくなるように、他の多くの対象者にインタビューを行い、分析を進め、まとめていく予定である。
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