本年度は昨年に引き続き、老人保健施設で痴呆性高齢者を援助している看護婦を対象者とし、「頼む」という援助の意味に対して調査を行った。方法としてグランデットセオリー法を用いて、12名の看護婦を対象に実際に「頼む」という援助をした事例を中心に、半構成のインタビューを行い、内容は許可を得て録音した。面接内容を逐語録にしたものをアドバイザーと共に意味の分析を行った。その結果、頼むことの意味として、痴呆性高齢者が落ち着いて居れる場所の提供、不安の軽減、自尊心を取り戻す、他の高齢者との仲間づくり、職員との交流という5つのカテゴリーがみられた。また、頼むことの戦略としていくつかのパターンがでてきた。自分から何かないかと言って来ることができる痴呆性高齢者には、昔の経験や得意としてきたことなどを頼んで行ってもらう。その結果、痴呆性高齢者は自分が必要とされていると感じ、自分の居場所を感じることができ、不安の軽減が図られるという効果がある。自分から言ってくることができない痴呆性高齢者には、他の高齢者の話し相手やおしぼり巻きなどの簡単な作業を行ってもらう。その結果、その時間を安心して過ごすことができるという効果がみられる。自分の意志表示ができず、反応も少ない痴呆性高齢者には、レクリェーションや簡単な作業などで、看護者が説明して、一緒に行ってもらう。その結果、職員とのコミュニケーションが図られ、笑顔といった反応がでるといった効果がみられる。そのため「頼む」という援助は、痴呆性高齢者の状態によって使い分けられ、様々な効果がみられることが明らかになった。
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