今年度は、病院から地域への移行期の看護の実態と患者の「居場所」づくりや移行期のケアに対する看護者の捉え方を明らかにするために質問紙調査を行った。得られた197(回収率59.3%)のデータを統計ソフトSPSSを用いて分析し、以下のことが明らかになった。 1.移行期の看護で平均値が高かったケアは、「安全を確保する」「患者の努力や好ましい変化などを誉めたり、励ましたりする」「信頼関係を形成する」の順で、信頼関係を基盤にした保護的な関わりの頻度が高いことが特徴的であった。自由記載の回答でも、患者の意志を大切にすること、「居場所」の確保、安心感や保証を与えることを非常に重視していた。また、全体的に実施度が低い傾向にあった『家族ケア』『連携』『拡大強化』に関するケアについては、婦長職、病棟外勤務者、退院後の関わりの経験があるものの群でそれぞれ他の群より有意に実施度が高かった。 2.6割が退院後を想定したケアが出来ていると評価していた。できていないと回答したものの理由には、退院困難な患者が多いという現状が圧倒多数を占め、次に病院のシステム上の問題があがった。看護者側の要因では、家族との関わり不足、社会資源や具体的な看護ケアに関する知識不足、時間に余裕がなく退院計画が遅れがちになるなどがあげられた。 3.患者の「居場所」に関しては、看護者は「住まい」のみならず「社会活動の場」も同様に重視しており、「居場所」づくりを支えるためには事例の特徴も反映して家族関係の調整を重視していた。 以上のように、看護者は患者の意志を尊重しながら地域での「居場所」を確保できるように保護的に移行期のケアを行っていた。今後はケアの継続や連携をよりスムーズにするためのシステムを強化すると同時に、個々の看護者が家族ケアや地域ケア、患者の自立に向けた具体的な看護援助についての知識や技術を強めていくことが必要だと考える。
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