脳血管障害を持ちながら在宅で生活をしている高齢者(以下要介護高齢者とする)への家族ケアに関して、ケア行動に込められている家族の思いを明らかにし、要介護高齢者とその家族への看護のあり方を検討することを目的として、今年度は以下のことを実施した。A市内に在住し、脳血管障害をもちながら在宅で生活を送っている高齢者の家族員で、同居している主ケア提供者を対象にインタビューを行った。在宅介護支援センターよりインタービューへの協力のお願いをしていただき、了承が得られた人をA市保健婦を通じて紹介を受け、研究者から連絡をとり、インタービューへの同意が得られた者を対象者とした。 現在までにインタビューを行った対象者は女性4名、男性2名の合計6名で、現在も分析を行いながらインタビューを続行中である。現在までにインタビューを終了した対象者と要介護高齢者との続柄は妻3名、夫2名、義娘1名であった。年齢は55歳から76歳、平均69歳であった。要介護高齢者は63歳から92歳、平均72歳、介護期間は2年から15年、平均5.7年であった。 現在までのデータ分析の結果から、家族は、要介護高齢者に対して、現在の状態がこれ以上悪くならないように、要介護高齢者ができるだけ自分でできるようにという思いをもって、関わっていた。また、介護家族にとってはある程度介護負担が大きくなったとしても、要介護高齢者がこれまでの長い人生の中で大切にしてきたものを大切にしたい、要介護高齢者の自尊心を傷つけないようにしたいという思いが込められていた。一方、家族が自分自身を守ることを主としてケアを行っているケースもあった。 次年度は、これまでのデータの分析を続けていくとともに、さらに対象者を増やしてデータ収集・分析を行う予定である。また、本研究者が過去に、視力障害を持つ糖尿病患者の家族と透析患者の家族を対象に行ったインタビューの結果と本研究の結果とを比較することにより、脳血管障害を持ちながら在宅で生活をしている高齢者の家族のケアの特徴を明らかにするとともに、要介護高齢者およびその家族への看護のあり方について検討することを目標とする。
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