研究概要 |
アルツハイマー型痴呆の老年者6名(中等度,高度,最高度痴呆の各2名)を対象者として,初回評価(観察を主とした自力摂食困難の評価)と介入評価(計画的介入に基づく自力摂食困難の評価)を比較分析することにより,介入による影響について検討した。その結果,以下の知見を得た。なお,インターバルとは,対象者の摂食動作が止まるなど,次の摂食動作の回復までに生じる「間」を意味する。 1.物音や人の会話が聞こえたり,人が動くたびに摂食から注意が逸れがちだった高度痴呆の1名は,摂食環境を整えることでインターバルの出現回数は18回から9回と半減したが,それ以外の対象者にはあまり変化を認めなかった。一方,インターバルの時間は41.8±21.1分から23.6±13.1分と,全ての対象者において短縮した(P<.05)。また,総摂食時間も75.2±19.9分から55.7±17.4分と有意に短縮した(P<.05)。インターバルの時間と総摂食時間とは高い相関があり,インターバルの時間の短縮に向けた介入は,総摂食時間の短縮化につながることが示された。 2.自力摂食割合は,中等度と高度痴呆において3.9〜23.5%増加した。最高度痴呆では自力摂食の回復を待つよりも身体誘導,次にspoon-feedingの順で介入し,時間をかけ過ぎずに口からおいしく摂食することが重視された。 3.サンプルクラスター分析の結果,第1クラスターは「摂食環境を整え自力摂食の6割以上の維持により,インターバルおよび総摂食時間の短縮可能な群」であり,中等度,高度痴呆が該当した。第2クラスターは「摂食環境を整えた上で,自力摂食の回復が難しい場合に身体誘導により自力摂食を促進することで,インターバルおよび総摂食時間の短縮可能な群」であり,高度,最高度痴呆が該当した。第3クラスターは,「自力摂食は殆ど困難だが可能な限り身体誘導を行うことで,総摂食時間の短縮可能な群」であり,最高度痴呆の1名が該当した。
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