研究概要 |
【目的】正中切開法による冠状動脈バイパス術(CABG)後の呼吸筋萎縮や胸郭運動制限緩和を目的とした呼吸筋伸展体操(RMSG)を併用した新しい術後運動療法プログラム(以下新RH)を作成し、運動耐容能、換気機能および呼吸筋力に及ぼす影響について検討した。【方法】CABGを施行した患者を無作為に抽出し、術後新RHを施行したR群4例と従来の歩行のみの運動を施行したC群6例にわけた。術前後スパイロメトリー(%VC,%FEV_<1.0>)を測定し、退院前には6分間歩行試験(6MWD)、Borg Score、最大吸気圧(MIP)および乳頭部胸郭拡張差(CHW)を測定し両群の比較を行った。【結果】両群とも、術後の%VCは術前よりも有意に低下していたが、退院前6MWDではR群が有意に高値を示した(p<0.05)。またMIPと6MWD間で正の相関関係(r=0.74,p<0.05)を、CHWと年齢間で負の相関関係(r=-0.75,p<0.05)を認めた。6MWD後のBorg Scoreおよび退院前MIP、CHWでは有意差はみられなかった。【結論】CABG後の早期RMSGは術後の運動耐容能向上に影響を与え、新RHの有用の可能性が示唆された。【今後の課題】RMSGが術後の胸郭呼吸筋緊張や創部痛による不良姿勢を緩和し、換気量増大の不均衡性を軽減することで、呼吸感覚の閾値をさげ、運動耐容能向上に関節的に影響を及ぼすのではないかと期待したが、Borg Scoreでは有意な低下はみられず明らかにされなかった。また術前の呼吸筋力測定が、対象者の発作を誘発する危険性があるため倫理的配慮から行うことができず、RMSGの呼吸筋力への影響を検証することができなかった。MIP以外の呼吸筋の評価方法としては、Konno-Mead diagram、瀧島らの呼吸筋機能測定装置と、いずれも特殊器具を必要とする。今後は、評価時期を含め安全性・簡便性・再現性の高い測定方法を検討し、RMSGの有効性を明らかにすること、対象者数を増やしRMSGの心理的側面への評価を行っていきたい。
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