明治21年(1888年)に創刊され、その後日本の動物学研究の成果を発表する中心となった日本動物学会(東京動物学会)の雑誌『動物学雑誌』と欧文誌『動物学彙報』Annotationes Zoologica Japonensesについて研究を行った。 まず、明治期におけるこれらの雑誌の論文、記事、翻訳紹介、総説等の内容について一覧表を作って、動物学会の研究内容を総合的に把握する資料を整えた。明治期『動物学雑誌』の総合的な見取り図を描こうと試みた。 次に、著者、翻訳者、対象動物、対象動物の分類群、方法論・研究領域等のキーによって掲載された記事の内容を整理・分類して、どのような文章がどの程度掲載されたのかを数量的に表記することを試みた。 その結果の分析を行って、『動物学雑誌』が動物学研究の推進とともに普及の役割を果たしたこと、各領域をめぐって、主にどのような人が、何を対象として研究を行ったのか等の具体的な研究の推移を明らかにした。また、それらの結果として、日本明治期の動物学研究の主目的が日本のファウナの確定と新種発見にあったこと、遺伝学や細胞学、実験発生学は文献紹介的な段階にあったことを明らかにした。 これまで日本明治期の生物学の歴史記述は、進化論の導入を重視し、多くの場合一部の研究者の研究成果を強調してきたが、より総合的な見地から明治期の動物学史を行う基礎となる文献調査を行った。
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