サッカーワールドカップ開催がもたらす国内への多大な影響力を認識した上で、ハードの側面、とりわけスタジアム建設やキャンプ候補地の整備に注目し、これとの関連で地方自治体がサッカー関係団体との相互作用や調整の中でどのような対応戦略をとっていったのかを、関連諸アクターの意図や資源(リソース)を把握しつつ、明らかにした。 具体的には例えば、日本開催地のうち6自治体(大分、神戸、大阪、静岡、札幌、宮城)での現地調査では、以下の5つの問題設定を行い、関連諸アクター間のネットワーク構造を明らかにしようとした。すなわち、 (1)ワールドカップ推進局の組織機構(推進委員会の位置づけや、ボランティア、関連イベント、交通・輸送対策、観光・宿泊対策、広報・情報対策といった各種専門委員会の職務やスタッフ構成など)(2)推進局内における各専門委員会の間での相互情報伝達や調整活動(3)県庁内での関連部局(例えば、教育委員会やスタジアム建設に関わる土木事務所、警備関係など)と推進委員会との情報伝達や意思決定をめぐる相互調整の態様。議会に対する報告や議会・議員からの要望等の中身(4)サポーター市民クラブ、県サッカー協会、スタジアム地元の住民組織、スポンサー企業や地元企業、JAWOC支部、県内キャンプ候補地、関係市町村との間の協力関係(5)日本開催地自治体間の連絡調整。韓国の開催地自治体との情報交換やイベント交流などの協力関係における独自の取り組み、といった問題設定である。
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