人間は必ずといっていいほど、行為の帰結についての「表象(イメージ)」を抱きながら行為を操縦している。社会が機能的に分化し複雑化するとは、「価値コンセンサス」や「規範的指向」といった社会的に共有され、自明視されてきたイメージが次々に相対化され、効用が限定されていくことを意味する。特に、高度消費化、情報化、成熟化した社会では、それまで共有されてきたあらゆるイメージが相対化され、非自明化されていく。こうした状況では、個々の体験を通じたイメージの獲得が相対的に重要になってくると同時に、そのようにして個々が依拠するイメージは、社会からはますます不透明のものになる。 運動したり、スポーツしたり、部活動に参加したりといった行為も(意識的であれ無意識的であれ)すべて何らかの社会的なイメージに基づき、何らかのイメージの獲得を目指すという、人間が行為するうえで不可避の前提に依拠している。しかし、変化の激しい現代社会ではそうしたあらゆるイメージが安定的な地位を与えられず、従来のステロタイプなスポーツ観、運動観による試作や事業がほどんど意味をなしえなくなる。こうした状況において、人々の抱くイメージの、真に科学的、理論的な検討が重要になってくる。 平成11年度の調査では、大学の学生、大学院生を対象に、運動・スポーツ実施、大学の運動施設の利用、スポーツ行事への参加と、意識生活(イメージ)との関係を明らかにする質問紙調査を実施した。無作為に抽出された学生、大学院生3014名に質問紙を送付し、現在回収作業中である。 また、某中高一貫校の全校生徒を対象に、運動部活への参加、実施状況、生理的、物理的に測定された体力、運動能力と、意識生活との関係を明らかにする質問紙調査を実施し、中学生359名、高校生236名から解答を得て、現在入力作業中である。
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