・筋形状の加齢変化に関する横断的研究 一般成人について、超音波法を用いて上肢(上腕部)および下肢筋(大腿部・下腿部)の筋形状(筋厚、羽状角[pennation angle])を計測した。被験者は健常青年、中高年を含む集団であった。測定データを申請者らがこれまでに蓄積してきた幼児から青年の横断的データと合わせて、加齢に伴う筋形状の変化について検討した。その結果、筋形状の加齢変化は筋によって異なり、萎縮の少ない筋(特に上肢)と 多い筋(特に下肢)が存在することが明らかになった。また、全ての筋において、筋厚と羽状角の間に正の相関関係が認められ、筋肥大は羽状角の増加、筋萎縮は羽状角の減少を伴うことが明らかになった。しかし、筋厚と羽状角の変動範囲は筋によって異なり、筋形状の可塑性に筋による違いがあることが示唆された。 ・最大随意発揮筋力犠牲に関する研究 青年被験者について、最大随意筋力発揮レベルを随意筋活動と電気刺激を併用した方法を用いて調べた。刺激強度や持続時間などの条件を調べ、安全性を確認した後、高齢被験者に応用した。その結果、高齢者における筋力低下は神経系の興奮水準の低下よりも筋萎縮の影響の方が大きいことが明らかになった。 ・筋腱複合体の力学的特性と柔軟性との関係 超音波法と筋力計を用いた筋・腱の物理的性質の測定手法を開発した。この手法を青年被験者および高齢被験者に適用し、筋・腱の力学的特性の特徴を明らかにし、柔軟性(間接可動域)との関連性について検討を加えた。得られた結果から、柔軟性の簡便で客観的な評価方法について検討した。
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