研究概要 |
「背景」血管系に対するNOの作用に及ぼすトレーニングの効果に関する報告は,現状ではいまだ少数にすぎない.血流増や低酸素をともなう長期の身体トレーニングは,NOを経由した血管応答性に変動を生じさせる可能性が推察されることから,いわゆるトレーニングの効果について,解明すべき興味深い課題が少なくない.「目的」長期のトレーニングとトレーニング後(デ・トレーニング),ならびに長期安静の状態による血管応答の変動を,NO反応性に焦点を合わせて評価し,その変動にデ・トレーニングや不活動の日数による順序性が見られるのか否かを明らかにすることとした.「方法」対象にWistar系ラットを用い,(1)9週間のトレッドミル走行の2日後、(2)同等のトレーニング3週間後,(3)後肢懸垂法による1週間の不活動状態および(4)3週間の不活動状態のラットについて,NOに対する血管応答性を通常飼育の対照ラットと比較検討した.血管の応答性は,マグヌス装置を用いて,腹部大動脈血管リング標本より,10^<-10>から10^<-3>MのNO発生剤(NOC18)及びアセチルコリン(Ach)を用いて,ノルエピネフリン(NE)の先行収縮に対する拡張能を評価した.「結果と考察」NEによる収縮に群間の差は認められなかった.このため,すべて10^<-7>M濃度を先行収縮に利用した.Achの添加はトレーニング群で容量反応曲線を右方に,不活動群で左に変移させた.一方,NOC18による変動も同様であったが,Achの変動より小さかった.以上の結果は,身体不活動によりNO依存の血管拡張能は亢進し,トレーニングによって減弱化することを示している.これらの機序について引き続き検討していく予定である.
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