血流増や低酸素をともなう長期の身体トレーニングは、一酸化窒素(nitric oxide ; NO)を経由した血管応答性などのNO代謝に変動を生じさせる可能性があるが、NO代謝におよぼすトレーニング、トレーニング停止、および不活動よるNO作用の変動様態などについてはいまだよく知られていない。そこで本研究は、長期のトレーニングとトレーニング停止後ならびに長期安静の状態による血管応答の変動をNOの反応性に焦点を合わせて評価し、その変動にデ・トレーニングや不活動の日数による順序性が見られるのか否かを明らかにすることを目的とした。実験にはWistar系ラット33匹を用い、(1)8週間のトレーニングおよび(2)3週間のデ・トレーニングならびに(3)1および3週間の不活動状態(後肢懸垂法)のラットについて、NOに対する血管応答性および代謝を通常飼育の対照ラットと比較検討した。8週間のトレーニングによって、ヒラメ筋のタンパク重量あたりのクエン酸合成酵素(CS)活性は26%上昇し、この差は有意であった(p<0.05)。また、デ・トレーニングによってCS活性は有意に低下し(p<0.01)、対照群との差は見られなくなった。不活動状態において、筋重量は1および3週間の不活動でそれぞれ27%および36%減少し(p<0.05)、CS活性も低下した。この環境において、血漿中のNO代謝物(NO_2^-およびNO_3^-の測定値より算出)はトレーニングにより55%増加(p<0.01)し、デ・トレーニングによって対照群を下回る水準に低下した(p>0.05)。また、不活動状態では懸垂1週間目で81%、3週間目で46%高値を示していた。なお、これらの変動は、昨年度発表したNO発生剤に対する大動脈の弛緩との相関は認められなかった。
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