体温調節反応は人の深部体温をある一定の範囲に保つため、身体内の恒常性維持には欠くことのできない反応であり、この能力の違いより運動のパフォーマンスが影響されるケースも報告されている。体温調節反応には深部体温などの温熱性入力が大きく影響しているが、運動時にはそれら以外の要因が補助的に作用しており、これが運動時の深部体温を一定に保つ重要な働きをしている可能性がある。これまでの研究(平成7年度と平成9年度の奨励研究)により、その入力としてcentral commandや筋や腱の機械受容器からの求心性入力が関与していることを明らかにした。本研究では筋代謝受容器が体温調節反応に及ぼす影響を検討することを目的した。 本年度は筋代謝受容器が体温調節反応に及ぼす影響を検討するため、男子被験者8名に対して環境温35℃、相対湿度50%の環境下で実験を実施した。この環境下で体温調節反応が定常になるまで待った後(約50分間安静にした後)、最大静的筋収縮(MVC)の測定を2回実施した。その後、アイソメトリックハンドグリップ運動を、1)30%MVCの運動を120秒間、2)45%MVC運動を60秒間実施した後、上腕に巻いたカフ圧を240mmHg以上に上げ、上腕を120秒間阻血した。いずれの条件もアイソメトリックハンドグリップ運動後の阻血中、心拍数や皮膚血流量は運動前の値に戻ったが、平均血圧と発汗量(胸部と前腕部)は運動前より高い値を保持した。阻血中は運動を実施していないことからcentral commandや筋や腱の機械受容器からの求心性入力は関与せず、筋代謝受容器のみの影響が生体反応に影響していると考えられる。したがって、発汗反応には筋代謝受容器が関与していることが推察された。
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