本研究の目的はサンプリングタイムが速く、骨格筋の酸素動態を測定するのに適した近赤外光・多チャンネル型酸素動態画像処理システムを試作し、これを用いてヒトの身体活動時における骨格筋の酸素動態の変化をみることである。本年度は装置の試作を主に行い、第一にプローブの光源が白色光で構成されるプローブ、ライトコントローラー、パワーサプライ、A/Dボードおよびパーソナルコンピュータで構成される12チャンネル型の酸素動態画像処理システムを完成させた。本システムのプローブはゴム状のラバーを用いているために測定部位の形状に合致し、身体活動に伴う筋の形状変化にも対応できるものである。しかし、発光素子に白色光を用いているためにサンプリング時間が約8秒かかり、運動開始および終了直後のダイナミックな変化を測定することができない。そこでこのシステムを基に、サンプリングタイムを早くすることを目的に発光素子をレーザー光に変更し、発光素子と受光素子の配列を一部変更することで2秒以内に約10×10cmの範囲で酸素動態が測定可能なシステムに改良した。 次に本システムの精度を確認するためにin vitroにおいてintralipidおよび血液を用いてキャリブレーション実験を行い、さらに光の特性が筋肉層に近いレジンのモデルを用いて本装置が不均一性を測定することが可能かどうかを確認した。その結果、本システムは(1)再現性が高いこと、(2)酸素動態の不均一性の測定が可能であること、が確認された。今後はソフトウェアの一部を改良することでサンプリングタイムを改善し、足関節用エルゴメーターを製作し、実際の身体活動時における骨格筋、特に腓腹筋郡の酸素動態の変化を測定する予定である。
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