研究概要 |
客観的に提示される情報と学習者が主観的に享受する情報は,必ずしも整合性のあるものではない.学習者が主観的な運動の感覚を獲得するためには,客観的な運動の情報の伝達だけでは不十分であり,言語を媒介とすることによる表象の共有が不可欠である.しかしながら,言語による伝達は,主観的であり,あいまいさが存在する.そこで,言語情報の受容における発達差を明らかにするため,横断的な分析を行った. 13〜15歳,16〜18歳,19歳以上の3つの年齢群を調査の対象とした.予備調査の結果にもとづき,運動の空間的調節(スペーシング),時間的調節(タイミング),力動的調節(グレーディング)を示すことばを各11選択,55の組み合わせを作成し,一対比較を行った. 判定の一貫性を検討するため,各対象者ごとに一致性係数を求め,年齢別に比較した.その結果,いずれの運動調節を示すことばにおいても,有意な差が認められ,年齢が高くなるにしたがって,一貫性が高くなることが明らかになった.特に,13〜15歳は,その他の年齢に比べ,力動的調節を示すことばで一貫性が低いことが示された.また,空間的調節を示すことばにおける判定の一貫性は,他のことばに比べ高いことが明らかになった.さらに,各年齢内での判定の一致性を検討したところ,年齢が高くなるにしたがって,一致性も高くなることが明らかとなった.また,各年齢別に心理学的尺度値を求めたところ,各年齢で尺度値が必ずしも同様の傾向を示すわけではなく,年齢が高くなると,尺度値の散らばりが大きくなり,ことばの区別が明確になることが明らかとなった. 次年度は,調査対象者の年齢を拡大し,運動調節に関わる言語がどのように作用するのかをkinematicな側面から分析するための実験を行う.
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