本研究は、スポーツ経営体側のアフターマーケティング戦略のレベルとスポーツ消費者の顧客不満足度や苦情行動パターンとの相互連関性を動態的に分析していくことによって、スポーツ経営におけるアフターマーケティング戦略の有効性について明確にすることを究極的な目的としている。そこで本年度は、スポーツ経営学やスポーツマーケティングの分野に見られる国内外のアフターマーケティング研究や消費者不満足研究についてレビューするとともに、10ヶ所の民間スポーツクラブの支配人を対象としたインタビュー調査を実施していくことによって、「アフターマーケティング戦略策定の概念的モデル」を構築することができた。具体的には、「1.顧客情報ファイルの価値の確立(顧客細分化:見込顧客<初回購入顧客、反復顧客、得意客、推奨客>と不適格顧客との情報収集」→「2.サービス・エンカウンター(顧客との遭遇時点;スポーツ・フィットネス体験中の顧客行動)の青写真化」→「3.顧客とのコミュニケーション・プログラムの確立」→「4.ロワー・マネジメント志向のエンパワーメント(権限委譲)型組織体制の確立」→「5.消費者対応(消費者苦情や意見・要望への的確な対応ができるようなサービス・リカバリー)システムの構築」→「6.顧客満足調査とサービス・クオリティ調査の継続的実施と分析」→「7.1へフィードバック」といった7つのステップがアフターマーケティング戦略の策定モデルとして概念化することができた。 しかしながら、このような概念的モデルは文献レビューとインタビュー調査から構築されたに過ぎず、この概念的戦略策定モデルが理論として一般化されるためには、この概念的モデルからいくつかの有益な仮説が演繹されるとともに、それらの仮説が実証的に帰納されなければならない。このことは、次年度に残された研究課題でもある。
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