研究概要 |
本研究は、スポーツ経営体側のアフターマーケティング戦略がスポーツ消費者の不満足や苦情行動および、業績レベルや月間平均退会率、顧客認識などに及ぼす影響力を動態的に分析していくことによって、スポーツ経営におけるアフターマーケティング戦略の有効性について明確にすることを究極的な目的としている。そこで本年度は、昨年度に構築した「アフターマーケティング戦略策定の概念的モデル」に基づいて、民間スポーツクラブにおけるアフターマーケティング戦略のレベルと業績レベルとの関連性について実証的に分析を加えた。その際、全国1,826ヶ所の民間スポーツクラブの中から、有意抽出法(典型法)によって693ヶ所のクラブを選定し、郵送法による質問紙調査を実施した。なお、有効標本回収数ならびに回収率は、それぞれ218、31.5%であった。 その結果、「アフターマーケティング戦略のレベルが高いクラブほど、業績レベルが高く、月間平均退会率が低い」という結果が得られ、主仮説は支持された。中でも、「サービス・リカバリー・システム」「顧客サービス」「顧客間関係性の組織化」「顧客とのコミュニケーション・プログラム」「サービス・クオリティの維持と顧客満足調査」「契約・手続関係の規制緩和化」「スポーツサービスの開発・改善努力」といった7つの活動が既存会員の「退会防止策」として展開されていた。また、会員に対しては「多様なニーズや欲求をもった個々に対応する必要がある存在」(40.5%)、「クラブへのロイヤルティを高めていくことが必要な存在」(38.0%)、「プログラムの内容を重視する人々」(36.6%)といった「顧客認識」の仕方をしているクラブが多いという結果が得られた。 このように、スポーツ経営体側の経営業績へのアフターマーケティング戦略の有効性は確認されたが、スポーツ消費者行動への影響力については今後に残された研究課題である。
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