研究概要 |
1)正常脂質者と軽度高脂血症者を含む男性25名(18-36歳)において、筋線維の組織化学的特性と血清脂質との関連性を検討した。年齢,最大酸素摂取量,体脂肪率の影響を補正した偏相関分析において,LDLコレステロール(LDLC)及びアポリポタンパクB(apoB)は,毛細血管密度との間に有意な負の相関,毛細血管1本あたりの筋線維断面積との間に有意な正の相関を示した。HDL2-コレステロールは上記と逆の関係を示した。すなわち筋毛細血管分布が密なほど良好な血清脂質レベルを有していた。これらの関係は筋線維タイプとは関係なく認められたことから、遺伝的要因の大きい筋線維組成よりも環境要因による毛細血管密度の変化が血清脂質レベルに関与している可能性が示唆された。 2)若年男性11名(18-25歳)を対象にLT強度の自転車エルゴメーター運動を1回60分、週5回、6週間実施し、その前後で骨格筋線維特性と空腹時血中脂質代謝指標の変化を検討した。LDLC、apo B、中性脂肪、及びインスリン値の低下を認めた。筋毛細血管密度の増加や筋拡散指標の減少傾向はあったが有意ではなかった。トレーニングによる血清脂質やインスリン抵抗性改善の一部には筋毛細血管分布や筋の酸化的代謝能の変化が関連し、結果として動脈硬化危険因子改善へ結びつく可能性が示唆された。
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