骨吸収抑制剤(EHDP;E)の投与に続き、走運動(Tr)を処方した卵巣摘出ラット(OVX)脛骨の骨梁骨および成長板軟骨の形態に及ぼす影響を明らかにし、本処方の骨梁構造並びに成長板の保持、改善に対する有効性についてもあわせて検討した。 その結果、頸骨の骨梁骨面積はOVX群よりEおよびTr群において有意に高い値を示した。また脛骨近位端の骨梁骨面積については、EHDP投与と走運動の交互作用が認められた。脛骨近位端の縦断切片において骨梁分布を観察したところ、OVX群では顕著な骨梁の消失がみられた。EHDP投与群では特に一定の幅で骨梁が極めて密に構築される特徴的構造を示した。EHDPのみを処方したラットでは骨梁が密に残存している領域と成長板との間の骨梁骨が著しく消失していたが、EHDPおよびトレーニングの両方を処方したラットではその間の骨梁骨は残存していた。また、成長板の幅はトレーニング群において大きく、軟骨細胞も規則正しく配列されていた。しかしながらEHDP投与では影響はなかった。骨梁骨面積はOVX群よりE群およびTr群において有意に高い値(p<0.05)を示し、EHDP投与と走運動の主効果(p<0.0001)並びに交互作用(p<0.001)も認められた。 以上の結果より、2週間のEHDP投与とそれに続く10週間のランニングトレーニングは卵巣摘出ラットの脛骨骨梁骨面積の維持に有効であることが示唆された。また、成長板の形態および軟骨細胞の保持には運動トレーニングが有効であることが示唆された。従って卵巣機能低下者の骨強度改善や骨折に対する対策としては、まず骨吸収抑制剤を用いて力学的に有効な骨梁構造を保持した状態で次なる骨形成作用を促進するように処方するほうが合理的であるものと考えられた。
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