本研究は機能的過負荷による筋肥大、筋線維組成の変化に対する局所的な因子の関与を明らかにするために、局所的に発現する成長因子であるIGF-Iの影響を中心にして観察した。 被験動物として10週齢のWistar系雄性ラット(190〜220g)を用い、正常な下垂体のグループと下垂体摘出グループを作成した。両グループとも一方の脚に対し足底筋の協働筋である腓腹筋とヒラメ筋を遠位1/2切除することによって足底筋に対し過負荷をかけた。また反対脚に対しては偽手術のみを施した。さらにトレッドミルによる運動を協働筋切除5日後より、3日に2日の割合で負荷した。2週間後、足底筋を摘出し、遠位1/3部位、および近位1/3部位について筋線維タイプの分類、IGF-I mRNAおよびGH receptor mRNAの測定を行った。 正常な下垂体のグループ、下垂体摘出グループともに2週間の機能的過負荷によって足底筋の筋重量は有意に増加した。部位別の変化をみると、機能的過負荷によって足底筋の遠位1/3部位では、いずれの筋線維タイプにおいても横断面積の有意な増加が観察されたが、近位1/3部位ではtypeI、IIA、およびIIC線維の筋線維横断面積の有意な増加が観察されたものの、正常な下垂体のグループ、下垂体摘出グループともにtypeIIB線維の横断面積は有意な変化が観察されなかった。機能的過負荷によってGH receptor mRNAは、正常な下垂体グループ、下垂体摘出グループともにその発現量が遠位部、近位部ともに低下する傾向にあった。IGF-I mRNAの発現量は機能的過負荷3日後に正常な下垂体グループ、下垂体摘出グループともに増加し、肥大効果の大きい遠位部で発現量が大きくなる傾向にあった。これらの結果は、機能的過負荷による筋肥大が成長ホルモンとは無関係に筋において発現される局所的なIGF-Iが関与することを示唆する。
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