研究概要 |
廃用性筋萎縮に対するビタミンE投与と運動の複合効果に関する研究の初年度として,筋萎縮に対するビタミンEの効果に関する投与量依存性について検討した.3週間の後肢懸垂により廃用状態を作成した.16週齢のFischer344系雌ラットを(1)対照群,(2)懸垂群,(3)懸垂+ビタミンE投与群にグルーピングし,さらに懸垂+ビタミンE投与群をlow-,middle-,high-doseの3群に分け,計5群とした.各群の摂餌量は同一になるように調節した.懸垂+ビタミンE投与群には,懸垂6日前から実験期間中を通して,RRR-α-tocopherolを隔日腹腔内投与し,low-,middle-,high-doseの投与量はそれぞれ体重1Kgあたり10,30,50mgとした.対照群,懸垂群にはポリオキシレン硬化ヒマシ油のみをプラセボ投与した.実験期間終了後,右側ヒラメ筋で収縮特性,筋原線維蛋白濃度を測定し,左側ヒラメ筋でα-tocopherolを高速液体クロマトグラフィ法により測定した.また筋線維組成の変化をmy ofibrillarATPase染色により観察した.ヒラメ筋中のα-tocopherol濃度はビタミンE投与群で高値を示し,投与量に依存したα-tocopherol濃度の増加が観察された。ヒラメ筋重量は懸垂により低下したが,ビタミンEのmiddle-,high-dose投与により軽減された.懸垂群はビタミンE投与に関わらず,筋原線維蛋白濃度の低下がみられた.等尺性最大張力は懸垂により低下したがビタミンE投与により増加傾向を示した.単収縮の収縮時間や弛緩時間はすべての懸垂群で低下し,ビタミンE投与の影響はみられなかった.ビタミンE投与に関わらず懸垂群ではtypeII線維比率が増加した.以上の結果から,ビタミンE投与による筋重量や最大張力低下の軽減は投与量依存性があるが,筋の収縮・弛緩速度や筋線維タイプの変化など機能的特性に対する影響はないことが示された.
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