最近の研究では、造血前駆細胞(幹細胞)が内皮細胞へと形質変換し、虚血損傷筋における血管の再構築に寄与するとの報告がされており、このことは血管新生に造血システムが寄与する可能性を示唆するものである。この知見をもとに「身体活動の増加による血管新生に造血前駆細胞由来の血管内皮細胞が寄与する」と仮説した。この仮説をヒトを用いた実験系で検証する第一段階として、身体活動量の多い持久的スポーツ選手と非鍛錬者との末梢血中造血幹細胞数を比較した。仮説が妥当であれば、スポーツ選手の方が末梢血中造血幹細胞数が多いはずである。 6名の持久的スポーツ選手との6名の定期的な身体活動を行っていない被験者の最大酸素摂取量と起床時の末梢血中造血幹細胞数を比較した。両指標ともスポーツ選手の方が有意に大きい値を示した。さらに、両指標の間に有意な正の相関が観察された。また、一過性の運動(40分間、80%Vo2max)によっても末梢血中造血幹細胞数は増加した。以上の結果は、持久的トレーニングのような身体活動の増加により、骨髄における造血が亢進したか、骨髄から末梢血中に造血幹細胞より多く放出されたことを示唆している。さらに、身体活動の増加によって増加した末梢血中造血幹細胞が活動筋の血管新生により多く利用されると考えられる。 次年度は、動物モデルを用いて造血前駆細胞の血管内投与が身体活動の増加による血管新生に利用されるか否かを検討する。
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