本研究は、日頃、余暇活動の面でアクティブに活動しており、また、余暇活動へのコミットメントレベルの高い中高齢者に焦点をあて、ESM調査の手法によって日常生活行動の実際や動機づけ、感情・気分、状況知覚・認知、余暇活動に対する意識・態度など幅広くデータを収集し、一般中高齢者との比較・対比を通じて、アクティブな中高齢者独特の行動パターンや心理的特徴を探ろうとするものである。 本年度の主なる課題は、2年間継続して行うESM調査のための調査票作成と、対照群(一般中高齢者)に対する予備調査の実施ならびに調査内容の検討であった。アクティブグループヘのESM調査も予定していたが、統計分析に必要なサンプル数を確保するには至らなかった。本年度ESM調査の結果、30名、1700件余の有効データを収集した(全て女性:45-68歳)。このうち、4名が本研究の想定するアクティブ中高齢者である。 1.アクティブな中高齢者サンプルが4名と少なく、今後のデータ蓄積が待たれるが、現時点では、ESMによる週全体の感情・充足感レベルや、一般質問紙調査・心理テストにおける様々なQOL指標の数値は、予想通りアクティブグループの方が高い傾向にあった。また、全サンプル(30名)を新たに、余暇活動頻度やコミットメント等の観点で2分して比較した場合でも、アクティブなグループのQOLレベルは高い傾向にあった。 2.上述、後者の2グループ間で生活・行動パターンを比較すると、消極的・積極的活動もすべて含んだ「余暇活動」に費やされる時間に顕著な差は認められなかった。これは、個人の全般的な生活充足感(QOL)が、表面的な余暇活動時間の多寡に関係するというよりは、様々な状況をできる限りポジティブで充足的なものとして体験しようとする積極的態度、すなわち「動機づけ」等の心理的傾向に影響されることを示すと思われる。
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