研究概要 |
加齢にともない脳内の神経細胞が変性、脱落する。この加齢にともなう神経細胞死に対して、運動に抑制効果があるかどうかについて我々は研究を進めている。神経細胞の生存、維持には、神経栄養因子が重要な役割をすると思われる。そこで今年度は、持久性トレーニングが、脳内の神経栄養因子[Brain-derived neurotrophic factor(BDNF),Neurotrophin-4(NT-4)]およびその受容体(TrkB)の蛋白量を変化させるかどうかについて調べた。Wistar系の雄ラットを用い、生後4週齢時から10週間の持久性走トレーニング(速度30m/min、1日90分、頻度週に5回)を施した。トレーニング終了後、ラットの大脳、小脳、脊髄、筋肉(ヒラメ筋、足底筋、腓腹筋)を摘出し、神経栄養因子とその受容体の発現量をWestern Blot法により比較検討した。持久性トレーニングにより、大脳、小脳、脊髄中のBDNF、NT-4、TrkBの量は亢進しなかった。また各筋肉中のNT-4の量にも、持久性トレーニングによる変化はみられなかった。今後免疫沈降法(immunoprecipitation)、あるいはリン酸化を識別する抗体を用いた免疫組織化学によって、一過性の運動が脳内の神経栄養因子の受容体を活性化しているかどうかについて調べようと思う。
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