今年度は韓国の統計資料による分析とともに、韓国慶尚北道高霊郡を対象にフィールドワークを行った。また、日本においても富山県八尾町をはじめとする農村工業地に関する現地資料の収集を行った。主な結果は次の通りである。 1.韓国通産産業部発行の『農工団地現況』(1987年および1997年)により、「農工団地」の全国的分布、立地要因(業種別、企業の規模別)、過去10年間の地域別増減と休・廃業等について分析を行った。その結果、韓国には1997年現在288ヵ所に「農工団地」の指定が行われており、3654企業のうち2544企業が稼働中で、稼働率は70%を下回っていた。農工団地での就業者は101159人であり、地元住民の割合は約65%に止まり、日本の場合と対照的であった。休・廃業率は16%を上回り、特に資本金1億ウォン未満の小企業の場合は約38%、業種別には雑貨・繊維部門がそれぞれ21%と18%と高かった。 2.慶尚北道高霊郡に位置する「双林農工団地」は全国的にも成功事例として知られているが、それは農村工業化の成功と言うよりも、都市工業の外延的な拡張としての性格が強かった。すなわち、韓国第3の都市である大邱から近接している地理的条件により、大邱から安い地代と広い敷地を求めて来る移転工場によって支えられているのである。その結果、現地住民の就業率が低く、とりわけ技能職の場合はそのほとんどが大邱からの通勤者であった。また、注目に値するのは、1998年以降の通貨危機の余波が時間的ずれを持って近年農村地域を襲っていることである。すなわち、都市部では通貨危機の影響が直ちに現れたが、農村部では1999年夏以降に解雇、臨時職への配置変え、不利な給料体系への転換などが横行しており、それを支えるための底辺労働力として外国人労働者が増加しているといった皮肉な状況が生じた。
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