研究目的は、現代日本の地域社会の変化を、ローカルレベルと上位のナショナルレベル・リージョナルレベルとの相互作用関係を視点に分析し、ローカライゼーションのプロセスを明らかにすることである。 今年度は、上記の関係を特に日本の農村出身者の都市定住過程とエスニック集団の社会構造の2つに焦点を当てて調査・分析・学会発表・論文発表を行った。 具体的には、前者に関しては、国家の地域政策や国内産業の空間的再編成(特に農林業、製造業、建設業と観光業)と県・市町村の地域政策や地元産業の再編成との関連を概観した上で、これらの政策や産業の空間的再編成がローカルな農村の政治・経済・社会構造に与えた影響を、おもにローカルな産業資本の動向、地方議会議員の選挙と地域住民の組織の対応の点から、ポリティカル・エコノミィの枠組みに準拠して考察を行い、それぞれの地域における対応様式の特質について考察を行った。 また、後者に関しては、日本におけるエスニック集団の社会構造の変化を分析した。近年の経済のグローバリゼーションの進行と関連させながら、商人を中心とした在日インド人のオールドタイマー達が居住し、定着している神戸およびその周辺地域と比較しながら、「世界都市」・東京とその周辺地域で情報産業に従事するインド人ニューカマー達の流入・定着過程を分析対象とした。その結果、グローバリゼーションの過程の中で、エスニック集団の社会構造が流動化・浮遊化し、場所に根ざさない社会となっていることが明らかになった。そしてこの傾向を決定的に特徴づけたのが、インターネットの急速な普及であったことが判明した。
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