研究概要 |
本研究の目的は,南西諸島のサンゴ礁段丘に産する酸素同位体ステージ3,5,7の化石サンゴの酸素同位体比とストロンチウム/カルシウム比に記録された各時代の平均的な海面水温や水収支,水温の年格差や経年変動を明らかにすることである. 今年度はまず,琉球列島の与那国島に分布するサンゴ礁段丘を空中写真判読により,上位よりIからV面に区分した.昨年度行った予備調査の際,祖納および北牧場におけるIV面上より採取したサンゴ化石の電子スピン共鳴(ESR)法による年代測定を行い,130-140Kaの年代を得た.この年代はIV面が酸素同位体ステージ5eにあたるという従来の見解(木庭ほか,1987;大村ほか,1994)と一致していた.またこの際採取したハマサンゴ(Porites spp.)化石のコア試料は若干変質して,本来のアラレ石が方解石化しており,年輪分析の試料としては不適当であることが判った. 陸上で長尺の化石試料を得るため,最長1mのコアが連続的に取れるコアラーを用意した.今年度の現地調査は3月に行い,年輪分析に適した化石試料を採取する予定である. 現在生息中のサンゴ骨格の記録と実際の海面水温とが一致しているかどうかを検証するため,小笠原諸島父島宮乃浜において,水温および塩分を連続的に測定する測器の設置および平成11年5月より12年2月までのデータの回収を行った.現生のサンゴ試料は1年分のデータが蓄積後の平成12年夏に採取し,測定データとサンゴ年輪の酸素同位体比やストロンチウム/カルシウム比との比較を行う予定である.
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