研究概要 |
試料中に存在する種々の金属塩を除去し、ナトリウム型に精製したジェランガムを用いて、そのヘリックスーコイルおよびゾルーゲル転移をレオロジーとDSCにより追跡した。動的粘弾性の温度依存性より、G"が著しく変化する温度をヘリックスーコイル転移温度(T_<ch>)、G'とG"が交差する温度をゾルーゲル転移温度(T_<sg>)と帰属したが、DSC測定においても、これら2つの転移に相当するピークが、明確に観測された。T_<ch>およびT_<sg>をジェランガム濃度の関数としてプロットすると、Sol-I,Sol-IIおよびGelの3つの領域をもつ相図が得られた。さらに、この相図から、ジェランガムは、濃度に依存して3つのタイプに分類されることが認められた。すなわち、1)ヘリックスーコイル転移のみ観測され、充分に冷却してもゲルが形成されないような希薄な系、2)ヘリックスが形成され、これらが充分に会合することによりゲルが形成される系、3)降温過程において、2つの転移温度が同時に観測され、ヘリックスが会合されるやいなや、直ちにゲル化が起こる濃厚な系である。1価のカチオンを添加すると、DSC測定における発熱・吸熱ピークは徐々に高温側に移行し、さらにある濃度以上添加すると、吸熱ピークの方は複数に分裂する傾向を示した。さらに、吸熱ピークが複数に分裂し、顕著な熱的ヒステリシスを示しはじめる塩濃度は、動的粘弾性において2つの転移温度が同時に観測される濃度と一致した。2価のカチオンをある濃度添加すると、主要ピークとは別にやや高温側に新たな発熱ピークが出現し、このピークは添加濃度の増加とともに、徐々に高温側に移行し、さらに塩を充分に添加すると、2つのピークは高温側で収斂し、単一ピークが観測されるようになった。昇温過程において、ジェランガム分子のヘリックスーコイル転移温度を示唆する吸熱ピークのエンタルピーは、化学等量的に減少し、ジェランガム分子中のカルボキシル基濃度と2価のカチオン添加濃度が一致したとき、そのエンタルピーはぼ0になることが認められた。
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