研究概要 |
本研究は,リスク管理に必要な資源(システムの冗長性の増加にかかるコスト)を確保できない生活主体に対して,その負荷を取り除くためには具体的にどういった施策が有効かつ実現可能性を持つかを明らかにすることを目的としている。現在の社会システムは,合理性・効率性を基準としてデザインされており,しかも,個々の生活主体にとってその維持存続は自律的に成立し得ない。こういった状況において,リスク対応の冗長性を共有しあう相互システム(リスク管理の資源環境である自助・公助・共助の補完的な体系)の構築の必要性が認識された。すなわち,リスクへの対応が,どのような資源配分や組織構造のなかで補完されているのかについてのモデルについての試論をなし,Annual Meeting of the Association of Employment Practices and Principlesにおいて,論題「Decision Making and Resource Management During Emergencies :A Comparison of US and Japanese Models」の学会発表を行い(N.Y.,Buffalo),そのレビューを受けた。さらに,共助および互助の構築に実績を持つイギリス(Oxford)に,NPOであるOxfam(オックスファム)を訪れ,コミュニティにおける共同性と相互扶助のあり方の課題と展望を考察した。その結果,公益型NPOの場合,ステークホルダーであるボランティアと受益者が同一でないことから,ネットワークの地域への定着に規模的・質的な限界があるものの,恣意性を地域への強い関心に転換することでコミュニティにおける共同性の復活もあり得ることが示唆された。これについては報文「NPOはコミュニティ構築の牽引車になりうるか?-公益型NPOにおける課題と展望-」としてまとめた。
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