本研究は、タイ国において活動を続けている民間の経済援助機関との密接な協力関係を活かして、チェンマイ県の市内、山岳地区及びウボンラチャタニー県ウボン市における調査で得られたタイ国児童・生徒の薬物乱用に関するデータを用いて、タイ国児童の薬物乱用及び学校と家庭の役割の構造を明らかにし、薬物乱用防止教育の評価・改善を試みようとしたものである。現地調査で得られたデータは以下の項目であり、調査は全てタイ語を用いて行われた。 薬物乱用知識・行動調査:薬物乱用知識・行動に関して先生や児童・生徒に対してのインタビューや質問紙調査。 エイズ知識・行動調査:エイズ知識・行動に関して先生や児童・生徒に対してのインタビューや質問紙調査。 教育状況調査:先生に対してのインタビューや質問紙調査。具体的な教育内容などの調査。 家庭・生活習慣調査:基礎的及び特徴的な家庭・生活習慣及び伝統的宗教観と保健行動の関係についてのインタビューや質問紙調査。 以上のデータから、タイ国の学校保健教育カリキュラムと北タイでのAIDS教育の実態を元にして、タイの学校保健教育とAIDS教育の特徴や問題点を検討した結果、北タイのエイズ問題が危機的状況にある中で、積極的にエイズ教育を行う一方、教育行政や教育の機会均衡についての問題が依然として残っていることが明らかとなった。また、児童・生徒の薬物乱用知識・態度に対するタイ国独自の「ロンリエン・シー・カオ(白い学校)」と呼ばれる運動が実施されていることが明らかとなり、特に北部地域ではタイ国保健省医療局北部薬物依存症治療センターでの推進事業と連係をとりながら、薬物依存症問題解決に対する研究と教育が官民を含めた関連局との共同作業によって実施されていることが明らかとなった。今後は特に薬物乱用知識・行動調査データを用いて因子分析等によるタイ国児童・生徒の薬物乱用知識・態度の構造を明らかにするとともに、学校と家庭の役割構造を正準相関分析によって探索する予定である。
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