水産加工食品は、アジア諸国で古くから用いられている水産物を加工することにより保存性を高め、独特の風味や種々の栄養的価値を付加したものである。しかし、これらは、生臭みの故に好まれないことがある。生臭みの要因の一つとして考えられるのが、水産物の加工工程中におこる脂質酸化を含むいくつかの成分変化である。そこで本研究では、水産加工食品の生臭みの解明を目的に、成分分析や嗜好テストを行った。まず、煮干しだしについてその風味に及ぼす脂質酸化の影響を調べた。数種類の市販煮干しの脂質性状を調べ、酸化がかなり進んでいることを認めた。さらに、HPLCを用いて脂肪酸組成を調べ、脂質の酸化がより進んでいると考えられる煮干しほど、n-3系多価不飽和脂肪酸が減少していることが明らかになった。また、煮干しだし汁の風味と脂質の酸化程度には相関がみられ、酸化が進んでいると考えられる煮干しからとっただし汁ほど生臭みが強く、味も好まれないという結果を得た。次に、さばなれずしの成分を分析し、嗜好テストを行った。さばなれずしの成分で注目されたのは灰分含量であり、骨ごと食べることのできる有用な食品であるといえた。塩分濃度は塩さばと同程度であった。真空パンクをして冷凍しておくと、数ヶ月は脂質を含むいずれの成分にも変化はなかった。嗜好テストでは、酸味と塩味が特に好まれなかったが、なれずしを食べた経験のある人ほど嗜好性が高く、生臭みは好まないが、独特の香りを好む傾向がみられた。さらに、魚や水産加工食品の消費減少によるn-3系脂肪酸の摂取比率低下を解消するための策として、魚介類やその加工品以外のn-3系脂肪酸供給源としてのあまに油利用を検討した。あまに油の保存に対してごま油の添加が有効であり、20℃以下では数ヶ月の保存が可能であった。あまに油を用いたマヨネーズでも、ごま油の添加による保存性と嗜好性への有効性が明らかになった。
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