本年度は自然発症糖尿病ラット(OLETF)を用いてインスリン抵抗性の指標に与える種々の多価不飽和脂肪酸投与の影響を検討した。実験群としては飼料に(1)OLETFコントロール(市販試料)(2)OLETF-ラード(市販粉末試料にラード添加)(3)OLETF-EPA油(市販粉末試料にEPA rich oil添加:EPA28%)(4)OLETF-AA油(市販粉末試料にArachidonic acid rich oil添加:AA25%)にて飼育した。血清総コレステロールはラード群に比しEPA群で有意に低く、一方アラキドン酸群では高値を示した。血糖指標の中で空腹時インスリン値はラード群に比し、EPA油群とAA油群で低値であった。経口糖負荷試験では各群間に明らかな差は認められなかった。しかし体脂肪の分布ではラード群に比し、AA群では内臓脂肪量が明らかに少なく、EPA群と比較しても腸間膜脂肪の低値が認められた。肝臓内脂肪の分布を脂肪染色にて組織的に比較したところ、コントロール群に比し、ラード群では中心静脈付近に大脂肪滴の存在が認められた。一方、EPA群ではラード群に比べて顕著に脂肪滴の分布が少なく、一方アラキドン酸油投与群においては肝組織全体に小脂肪滴の散在が認められた。また、肝組織の中性脂肪量を測定したところ、EPA油群がラード群に比べて有意の低値を示した。さらに組織膜上でのインスリン感受性低下に及ぼす各油食の影響を筋肉のGLUT4mRNA量にて観察したところ、各群間でGLUT4mRNA発現量に差は認められなかった。以上のことから食事中の脂肪酸の種類の違いがインスリン感受性に明らかな変化を示さなかったものの、体脂肪の分布や肝臓中での脂肪蓄積量の違いなどには関連があることが示唆された。
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