1.塩類の系での氷の融解温度のデジタル出力のデータ保存;Miyawakiらが考案した氷の融解温度測定装置を試作し、データ出力をデジタル化し、汎用性のある数式解析ソフト上での分析を試みた。NaClなどの電解質やスクロースなどの非電解質の水溶液を凍結後に再度融解させて、その際の温度(FP)をデジタル出力で解析ソフト上で算出したところ、連続出力で打ち出した図を手作業で作図して求めたFP値に比べてやや低く算出される場合が多かったが、それらの差は極めて小さく、それぞれのFPをFerro-FontanとChirife(1981)の式に適用させて算出したAwは±0.02以内の誤差しかなかった。 2.食物繊維-水系での溶液構造;高分子の特徴として、同じ名称の高分子でも分子量分布などをはじめとして物理科学的な性状に多様性がある。そこで、製造元やロットの異なる4種類のポリデキストロース(PD)水溶液の溶液構造をFPや粘度ηなどを指標として解析した。種類の異なるPD水溶液のFPは、同濃度であれば、0.03℃以下の狭い範囲で分布した。PD溶液にNaClを添加してFPの変化を調べても4種類のPDの種類による差はほとんどなく、静電的相互作用が存在する中でのそれぞれのPD水溶液の溶液構造は安定であることが示された。また、PD溶液に添加したNaCl濃度が上昇するにつれてPD-NaCl溶液のηも上昇したが、添加したNaCl単独の水溶液のηの上昇とよく一致していた。したがって、NaClがPD水溶液中に共存していても、そのPDの溶液構造に影響を与えない可能性が高いと思われた。さらに、これら4種類のPDのゲル浸透クロマトグラフィでもきわめて近似した溶出時間を示したことから、この試験に用いたPDは種類に関係なく、同濃度であれば同じ溶液構造を示す可能性が高いと考えられた。
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