Ca^<2+>やMg^<2+>の塩類が低分子水溶性食物繊維水溶液に共存した系の水溶液構造の解析を、すでに前年度の業績によって有効性が示されているデジタル出力で系内の氷の融解温度を測定する装置を用いて、氷の融解温度を指標にして追跡した。低分子水溶性食物繊維の代表としてポリデキストロースを用い、その水溶液の系内にCaCl_2やMgCl_2を共存させて、-20℃で凍結後、室温で振動を与えながら融解させ、その際の温度(FP)を求めた。 CaCl_2を終濃度2%のポリデキストロース水溶液中に共存させた場合、ポリデキストロースを含まない同濃度のCaCl_2水溶液のFPによく一致していた。また、CaCl_2の代わりにMgCl_2を用いても、CaCl_2を添加した場合と同様に、ポリデキストロースの存在が系のFPに影響を与えることはなかった。しかし、ポリデキストロース20%の系にCaCl_2を添加した場合には、その系のFPはCaCl_2水溶液単独のFPやポリデキストロースのみのFPよりも低く、さらにそれぞれの単独溶液のFPを合算した値から予想されたFPに比べて明らかに低値を示した。 MgCl_2を加えた系でも、CaCl_2を加えた場合と同様に、単独溶液のみのFPの合算値から推定できなかった。これらのことから、ポリデキストロース濃度が数%であると低分子物質添加の影響が明らかではないが、ポリデキストロース濃度が少なくとも20%と高濃度になった場合には低分子物質を添加した効果が系の氷の融解温度の違いとしてみられることが示された。一方で、高分子水溶性食物繊維の一種であるアルギン酸ナトリウムに系の一部がゲル化して不均質にならないようにCa^<2+>やMg^<2+>を添加すると、低濃度のポリデキストロースの系と同様に低分子物質の添加作用はFPの違いとして表れにくかった。
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