フラボノイド類は、柑橘類や日常に私達が飲用している緑茶などに多く含まれている植物成分の1つで、抗酸化作用や抗ガン作用をはじめとした多くの生理作用を有するポリフェノール化合物である。最近では、ある種のフラボノイド類が、肝臓で生体異物の酸化酵素であるチトクロムP450(P450)の活性を増強したり、逆に著しく阻害するといった報告が数多くなされている。しかしながら、フラボノイド類が経口的に摂取されてからの生体内動態(吸収、分布、代謝、排泄)に関してはあまり報告がなく、上記生理活性が母化合物と代謝物のどちらによるものか不明である。そこで本年度は、フラボノイド類の代謝に関するP450分子種を明らかにすることを目的とし、フラボン類のアピゲニンのラット、モルモット及びハムスター肝ミクロゾーム(Ms)による代謝を調べた。 HPLCによる分析の結果、ラット、モルモットおよびハムスター肝Msはいずれも、1種類の代謝物(M-1:ルテオリン)を生成した。次に、ルテオリンの生成に及ぼすP450誘導剤の影響を調べたところ、フェノバルビタール(PB)前処理肝Msでは、すべての動物で未処理Msとあまりかわらなかったが、MC前処理でいずれも増強され、ラットでは未処理の1.7倍、モルモットでは2.9倍、ハムスターでは16.2倍であった。さらに各種P450に対する抗血清による代謝阻害を試みたところ、ラットMC-Msを含む系への抗CYP1A1抗血清の添加により、ルデオリンの生成は34%が阻害された。また、モルモットPB-Msを含む系への抗CYP2B18抗血清の添加により、約50%が阻害された。一方、ハムスターP450(CYPIA2、CYP2A8、HPB-1)に対する抗血清の添加では、ハムスターMC-Msにおいて、抗CYPIA2抗血清のみが、ルテオリンの生成を約10%まで強く阻害した。 以上の結果より、特にハムスターMC-Ms では、CYP1A2が最も重要であることが明らかになった。また、ラットやモルモット肝MsでもそれぞれCYP1A1とCYP2B18が一部関与しているものの、別のP450分子種の関与も示唆された。
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