近年、高齢化社会になりつつあり、それに伴い摂食・嚥下障害患者数も増加しているが、このような患者に対し栄養士が自信を持って適切な食事を供与している施設は数少ない。この原因は、施設において、摂食・嚥下障害患者に適した食事は、栄養の充足ではなく、個々の患者にとって食べやすい食事、すなわち物性的な因子が重要になってくるためと考えられる。現段階の研究では、食品物性を「かたさ」「付着性」「凝集性」の3要素に分け、重度の摂食嚥下障害患者がチューブ栄養から経口栄養に移行する際、最初に口にするゼリー様食品についての研究を行っている。具体的には、ゼリーを作るための素材として、ゼラチン、寒天、κカラギーナンを各数種類ずつ用いて、実際病院等の施設でゼリー作成時に使用している程度の濃度を基準とし、濃度を変化させた場合、加熱状態を変えた場合、ゼリー作成後の経時的な変化、などについて検討を行った。 施設の看護婦や栄養士などの医療従事者は、寒天とゼラチンではどちらが物性的に優れているのかという疑問を持っているが、それ以前の問題点として、同じ増粘剤、例えば寒天を使用した場合、その種類により大きく物性が変わることや、経時的な変化においては、ゼラチンの物性は大きく変わるが、寒天、κカラギーナンではあまり大きな物性変化はおこらないことなどの基礎的な検討を繰り返し行った。 上記の結果については、 平成11年10月 愛知県食品技術センター「高齢者に適した食品開発」 平成11年10月 青森県栄養士会福祉協議会「嚥下困難者への食事の対応」 平成12年1月 第8回岐阜県栄養改善学会「摂食嚥下機能障害者の治療における適切な食事についての基礎的な研究」等で講演、学会発表を行った。
|